葉酸不足が原因の葉酸欠乏症の症状と胎児への悪影響とは?
バランスのとれた食事をしていれば、起きない症状ポヨ!
でも妊婦さんは普段よりも多く葉酸が必要になるから、なっちゃんも気を付けるポヨ!
1.葉酸欠乏症の症状とは
葉酸が不足することで起きる「葉酸欠乏症」は、聞き慣れないかもしれませんが、食生活が不規則な場合や偏食の多い人には起きる可能性があります。
体調がなんとなくすぐれないけれど、葉酸不足と認識していないケースもあるかもしれませんね。
葉酸の働きのひとつに造血への関与があり、血液中の赤血球を作る役割があります。
そのため、葉酸欠乏症では動悸、息切れ、倦怠感などの貧血症状を引き起こします。
また、葉酸は細胞の生産に関与し、新陳代謝を助ける働きを助けるのですが、葉酸が不足すると細胞分裂に支障をきたすし、免疫機能や消化管機能が低下し、口内炎や舌炎、胃や十二指腸潰瘍、下痢、体重減少などが起こりやすくなるのです。
後述しますが、妊娠中の女性、特に妊娠早期に「葉酸欠乏症」をきたすと、胎児に神経管閉鎖障害を起こすリスクが高まると言われています。
胎児の発育にも葉酸は必要ですから、葉酸の欠乏によって胎児の体重増加が鈍くなり、低体重となるケースもあります。
2.葉酸欠乏症の原因とは
葉酸は、緑黄色野菜のホウレンソウやグリーンアスパラガス、ブロッコリー、いちごなどの果物、鶏・豚・牛などのレバーなど多くの食品に含まれていますから、多くの食品をバランスよく、規則的に摂っていれば、重篤な欠乏症をきたすことにはなりません。しかしながら、低栄養、偏食、多量のアルコール摂取、喫煙、ある種の薬剤による葉酸代謝阻害、妊娠または授乳による需要の増加などで葉酸欠乏症になることがあるのです。
2-1.葉酸欠乏症の原因
成因 | 原因 |
---|---|
不十分な摂取 | 新鮮な青物野菜または栄養強化穀物の不足した食事、慢性アルコール中毒、中心静脈栄養 |
吸収障害 | セリアック病、スプルー(慢性無熱性栄養吸収不全症候群)、その他吸収不良症候群、薬物(フェニトイン、プリミドン、バルビツール酸塩)、先天性または後天性の葉酸吸収不良 |
不十分な利用 | 葉酸拮抗薬(メトトレキサート、トリアムデレン、トリメトプリム)、抗痙攣薬、先天性または後天性の酵素欠乏症、アルコール中毒 |
需要の増加 | 妊娠期、授乳期、乳児期、代謝増加時 |
排泄増加 | 腎臓透析(腹膜または血液透析) |
引用:メルクマニュアル│葉酸
葉酸は熱に弱く、「水溶性ビタミン」であるがゆえ、茹でるとゆで汁に溶出してしまいます。
野菜を食べるように心掛けていても、ゆでこぼしている場合では葉酸を取り損ねている可能性があります。
生野菜も摂るようにする、果物の摂取を増やすなど、工夫が必要ですね。
米国などの諸外国では穀物などに葉酸を添加することが義務付けられています。
日本では葉酸添加は義務付けられていません。
しかし、日本でもいくつかの食料品会社が自発的にシリアル、乳製品、キャンディーバー、クッキーなどに葉酸添加をしていますので、積極的に選んでみると良いですね。
アルコールは、葉酸の吸収、代謝、排泄および腸肝循環による再吸収を阻害してしまいます。
喫煙も同様で、せっかく葉酸を摂っていても欠乏症を招いてしまいます。
けいれんを抑える薬剤を服用している場合、ある種の抗がん剤を使用している場合は葉酸代謝が阻害されてしまい、体内で葉酸が本来の働きをすることができません。
このような薬剤を使用している場合は、注意深く葉酸不足になっていないかモニタリングすることが必要です。
そして、透析治療を受けている場合には「葉酸欠乏症」に陥りやすいと言われています。
葉酸は水溶性ビタミンなため体内には残りにくく、さらに透析で除水されてしまうため、速やかに排泄されてしまうのです。さらに透析患者はカリウムやリンを制限する必要があり、結果的に葉酸の摂取も抑えられてしまいます。
妊娠中には、母体自身の栄養を維持するほか、胎児の成長のため葉酸の需要が高まります。
そのため、妊娠さらに授乳期間には通常より葉酸摂取量を増やす必要があるのです。
通常、「葉酸欠乏症」の治療は「葉酸サプリメント」を経口摂取します。
妊娠、授乳中も必要な摂取量を満たすためには、葉酸サプリメントの摂取が必要です。
2.胎児への影響
胎児の細胞分裂が盛んに行われている妊娠初期(4週~12週)に母体の葉酸が不足していると、先天異常である神経管閉鎖障害を発症するリスクが高くなることがわかっています。
この神経管の下部に閉鎖障害が起きた場合は二分脊椎を引き起こします。
二分脊椎は脊椎の中にあるべき脊髄が外に飛び出してしまうものです。
二分脊椎は顕在性二分脊椎症(開放性)と潜在性二分脊椎症(脂肪腫)に分類され、前者では生後すぐに手術が必要になります。
幼児期になると、運動麻痺、感覚麻痺、膀胱障害、直腸障害、学習障害などが起き、歩行や排泄に支障をきたすことが多いのです。
私は、小児科病棟で看護師をしていた経験から、二分脊椎の小学生の女の子と接したことがありますが、カテーテルを使用した導尿が必要で、車椅子での生活が必要でした。
自分の個性として前向きに障害を受けとめている女の子でしたが、行動に制約があるのは否めません。
神経管の上部に閉鎖障害が起きた場合、脳が形成不全となり無脳症となります。
無脳症ではお腹の中でそれ以上育つことができずに、残念ながら流産や死産となってしまうリスクもあるのです。
この神経管閉鎖障害は、葉酸の摂取で発生リスクを低くすることが出来るので、しっかりと摂取したいものです。
では、どのくらい摂取すれば良いのでしょうか?
厚生労働省による日本人の食事摂取基準(2015年版)では、妊婦、授乳婦において先から述べているように需要が増加するため、通常よりも多くの葉酸を摂るよう推奨しています。
葉酸の食事摂取基準(女性)
- 18~49歳: 240μg/日(0.24mg/日)
- 妊 婦: 480μg/日(0.48mg/日)
- 授乳婦: 340μg/日(0.34mg/日)
この摂取量を満たすためには、厚生労働省では食事からの摂取に加え1日0.4mgの栄養補助食品から葉酸摂取するよう勧告しています。