葉酸過剰摂取による副作用と葉酸過敏症のリスク1日上限1,000μg
今日から、ちょっと多めに葉酸サプリいっぱい摂ろうっと!
ほら、「一日〇粒、1日の摂取目安量を守ってください」って書いてあるよ。
葉酸にも上限があるんじゃないかな
葉酸は過剰摂取することで、「葉酸過敏症」になったり、ビタミンB12欠乏症の診断が遅れて「神経症状を悪化させる原因」になったりするポヨ!
ふたりとも教えてくれてありがとう~!
1.葉酸を摂り過ぎると?
葉酸が体にとってとても大切な栄養素で、特に妊娠中の摂取は必須。食事からの摂取に加え1日0.4mgの栄養補助食品からの葉酸摂取が厚生労働省から推奨されています。母子手帳にも記載があります。
では、葉酸を摂り過ぎることで、副作用なども問題はないのでしょうか?
厚生労働省による日本人の食事摂取基準(2015年版)では、サプリメントや強化食品に含まれるプテロイルモノグルタミン酸における耐用上限量が示されています。
すなわち、食事からの摂取量ではなく、栄養補助食品から摂ってよい量なのですが、それは18~29歳の女性では900μg/日(0.9mg/日)、30~49歳の女性では1,000μg/日(1mg/日)となっています。
上減量が決められているということは、摂り過ぎると健康上問題が発生するのでは、と不安にもなります。
それに併せて食事からも葉酸を摂っていると、知らぬうちに過剰になってしまうのでは…、と葉酸サプリメントを服用することに躊躇してしまいますよね。
葉酸は本質的に毒性をもたないと言われ、過剰摂取しても水溶性ビタミンであるため体に蓄積せず、排泄されます。
ですが、葉酸を過剰摂取することで起きる問題点はいくつかあります。
ひとつは、「葉酸過敏症」を起こす可能性です。
症状としては、発熱、蕁麻疹、かゆみ、呼吸障害などです。
この葉酸過敏症について、いくつかの症例報告があるものの、その反応がサプリメントの他の成分に起因する可能性もあり、現在のところはっきりとした根拠は明らかではないようです。
もうひとつは、葉酸の過剰摂取によってビタミンB12欠乏症の診断が遅れ、神経症状を悪化させる原因になることがあるということです。
葉酸はビタミンB12とともに赤血球を作る造血作用があります。
葉酸やビタミンB12が欠乏すると正常な赤血球を作ることができず、巨赤芽球性貧血を引き起こします。
ビタミン巨赤芽球性貧血の原因がB12欠乏の場合は、通常の貧血症状に加えて下肢のしびれや運動失調などの神経症状を伴います。
一方、葉酸欠乏の場合には神経症状は現れません。
ビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血の治療で葉酸を投与した場合には貧血は治まりますが、ビタミンB12欠乏による神経症状は解消されないのです。
貧血の診断を適切に行い、治療を行う際に葉酸の過剰摂取が思わぬ誤診につながる恐れがあるということです。
もうひとつは、葉酸を過剰に摂取すると、亜鉛と複合体を形成して小腸からの亜鉛の吸収を抑制する可能性があるためです。
引用:NCBI│Folic acid safety and toxicity(葉酸の安全性と毒性)
また、葉酸ががんの発生と関連があるのではないかと危惧する声がありました。
2007年のColeらの研究(JAMA 2007)で、葉酸サプリメント1日1mgを3年以上にわたり投与した結果、ごく一部の患者で、ポリープの悪性化をきたすかもしれないという報告がありました。
しかし、Suらの疫学的研究(Ann Epidemiol 2001)により、逆に葉酸が大腸がんの発生を抑制するという結果が示されており、さらにGazianoら(JAMA 2012)、及びVollsetら(Lancet 2013)のメタアナリシス(論文の発表内容から事実を確認する研究法)により、葉酸の過剰摂取とがんの発生との関連性は完全に否定されています。
どちらにしろ、葉酸を多量に摂取したからといってより健康が増進するとか、胎児の発育が良くなる、というものではありません。
ですから、葉酸の摂取量が過剰にならないよう上限量を守ることは大切ですね。
2.葉酸サプリメントを摂取するうえでの注意点
厚労省が発表した報告書「神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について」では、栄養補助食品はその簡便性から過剰摂取につながりやすいこと、葉酸摂取量が1日当たり1mgを超えるべきではないこと、栄養補助食品を利用することが日常の食生活のあり方に対する安易な姿勢につながらないように、と注意を促しています。
引用: 神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について
しかし、胎児の神経管閉鎖障害を減らす観点から、妊娠早期の葉酸欠乏は避けなければなりません。
葉酸の生体利用率が低いこと、熱に弱く調理で失われてしまいやすい栄養素であるため、葉酸サプリメントを服用してしっかりと必要量を摂取することが大切です。

先に述べたように、食品中の葉酸(プテロイルポリグルタミン酸)の生体利用率が50%であるのに対し、化学合成された葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)の生体利用率は85%で、生体利用効率の高いことが特徴です。ですから、葉酸サプリメントの場合は、含まれる葉酸成分がしっかりと体で利用されます。
葉酸サプリメントの場合では、摂取量が少なかったら神経管閉鎖障害が心配だから念のため…と多めに摂取する必要はないのです。
厚生労働省の推奨する1日0.4mgを葉酸サプリメントで摂取しましょう。
そして、葉酸サプリメントを購入した際に、パッケージに記載されている栄養成分表示を確認することが大切です。
栄養成分表示には、1錠あたりの葉酸含有量が記載されています。
実は、それぞれの葉酸サプリメントで1錠に含有する葉酸の量が異なるのです。
例えば1錠で0.4mgを含むもの(すなわち1日1錠で良い)、1錠で0.2mgのもの(すなわち1日2錠必要)などがあります。
しっかりと栄養成分表示を確認し、1日に必要な錠数を服用するようにしましょう。